物語全文
トレーニングルームには、重厚な肉体がぶつかり合う鈍い音が響き渡っていた。
空気は熱気と男たちの汗の匂いで満ちており、空調設備の唸り声すらも彼らの荒い呼吸にかき消されている。
「オラァッ!!」
紅牙の丸太のような腕が唸りを上げて繰り出される。
その拳は、鋼鉄をも砕くほどの威力を秘めていたが、対峙する蒼斗は一歩も退こうとはしなかった。
避けることなど、彼らの辞書にはない。強靭な肉体を持つヒーローにとって、攻撃を受け止めることこそが強さの証明なのだ。
ドゴォォォォンッ!!
紅牙の拳が、蒼斗の鍛え抜かれた腹筋に深々と突き刺さる。
隆起した腹直筋が波打ち、衝撃を筋肉の鎧だけで吸収する。
「ぐっ……! 効かねぇな、紅牙ァ! そんなナマクラな拳で俺の筋肉が貫けるかよ!」
蒼斗は苦痛に顔を歪めるどころか、獰猛な笑みを浮かべて紅牙を挑発した。
彼の胸元にある黄色いクリスタルが微かに明滅し、体内で精エネルギーが爆発的にヒーローエナジーへと変換されていく。
「お返しだッ! 痺れさせてやるぜ!」
蒼斗の拳に青白い稲妻が走る。
彼はその帯電した拳を、紅牙の分厚い胸板めがけて躊躇なく叩き込んだ。
バチバチバチッ!! ズドォォン!!
「ぬぅぅぅんッ!!」
紅牙の胸筋が衝撃で大きくたわむ。
電流が身体を駆け巡り、筋肉を強制的に収縮させる激痛が走るはずだが、紅牙は仁王立ちのままそれを受け止めた。
焦げ付くような熱と衝撃。それが彼らの本能を刺激する。
性欲のはけ口としての暴力。
互いに傷つけ合い、肉体を痛めつけることでしか解消できない鬱屈した熱が、拳を通して伝播していく。
「二人とも、動きがいいですね。エネルギー変換効率も上昇しています」
モニター越しに数値をチェックしていた博士が、冷静な声で告げる。
彼らの肉体は、ダメージを負えば負うほどに活性化しているようだった。
汗で濡れた肌が照明を反射し、テラテラと輝いている。
紅牙の赤いスーツと蒼斗の青いスーツは、互いの体液と脂で汚れ、強烈な雄の臭気を放っていた。
「へっ、博士が見てやがるんだ。無様な真似はできねぇな……おい蒼斗、もっと本気で来いよ。俺の身体が冷えちまうだろうが」
「言われなくても! その自慢の髭面、歪ませてやるよ!」
再び距離を詰め、ゼロ距離での殴り合いが始まる。
ガードなどしない。互いの顔面、ボディ、そして太い腕を、ただひたすらに殴り続ける。
ボゴッ、グシャッ、ドスッ。
肉が潰れるような生々しい音が連続し、彼らの呼吸は獣のように荒くなっていく。
痛みは快楽ではない。だが、この極限の肉体的接触だけが、彼らの昂りを鎮める唯一の手段だった。
「ハァッ、ハァッ……! いいパンチだ……もっとだ、もっと奥まで響かせろ!」
紅牙の股間が、スーツ越しに微かに膨らみを見せているかもしれない。
だが、それを指摘することはない。
彼らは戦う男であり、この勃興するエネルギーは全て敵を倒すためのものだと信じ込んでいるからだ。
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戦闘訓練が一通り終わり、二人はシャワーを浴びることにする
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トレーニングルームでの激闘を終えた二人のヒーローは、荒い息を整えながらロッカールームを経てシャワールームへと足を踏み入れた。
白いタイル張りの空間は、すでに充満し始めた熱気と湯気で視界が白く霞んでいる。
彼らが歩を進めるたびに、鍛え抜かれた足裏が濡れた床を叩き、ペタペタと湿った音を立てた。
「ふぅ……。ったく、今日は随分と激しくやりやがって。おかげで身体中が泥と汗でベトベトだぜ」
紅牙は太い指で顎鬚に絡みついた汗を拭い去ると、躊躇なくシャワーコックを捻った。
頭上から降り注ぐ熱い湯が、彼の隆起した僧帽筋から広背筋、そして引き締まった臀部へと流れ落ちていく。
赤黒く鬱血した打撲痕が、湯に濡れることでより一層鮮明に浮かび上がっていた。それは先ほどの蒼斗との激戦の証であり、彼にとっては勲章のようなものだ。
「へへっ、兄貴こそ容赦なかったじゃねぇか。ほら見ろよ、俺のわき腹。兄貴の拳の跡がくっきり残ってるぜ」
蒼斗もまた隣のブースで湯を浴びながら、自身の腹斜筋を指差して笑った。
そこには確かに、紅牙の拳の形をした痣が青々と刻まれている。
しかし、蒼斗の表情に痛みの色はなく、むしろ誇らしげにその傷を晒していた。
彼らは知っている。この痛みこそが、自己の肉体が強靭であることの証明であり、次なる戦いへの糧となることを。
狭いシャワールームの中で、二人の巨躯が並ぶと圧迫感すら覚える。
湯気に混じり、男特有の濃厚な体臭と、洗い流された汗の匂いが鼻孔をくすぐる。
互いの肉体は手が届くほどの距離にあり、ふとした拍子に濡れた肌同士が触れ合いそうになる。
「おら、背中流してやるから貸してみろ。自分じゃ届かねぇ場所もあるだろうが」
「おっ、サンキュ兄貴! じゃあ俺も後で流すよ。ギブアンドテイクってやつだな」
紅牙は無骨な手つきで硬いスポンジを掴むと、たっぷりと泡立てて蒼斗の背中に押し当てた。
ゴシゴシと力を込めて擦るたびに、蒼斗の筋肉が波打ち、白い泡が汚れた皮膚から垢を削ぎ落としていく。
広背筋の溝、脊柱起立筋の隆起。紅牙の指先は、蒼斗の肉体の形状を確かめるように、力強く、それでいて丹念に這いまわる。
「いい筋肉になってきたじゃねぇか。以前よりも張りが増してる。博士のメニューが効いてる証拠だな」
「だろ? 最近じゃどんな攻撃を受けてもビクともしねぇ自信があるぜ。……くぅっ、そこ! 効くぅ……!」
紅牙が肩甲骨の間の凝り固まった筋肉を親指でグイと押し込むと、蒼斗が堪えきれずに声を漏らした。
それは苦痛の声というよりは、蓄積した疲労が芯から解きほぐされる快感に近い響きを持っていた。
狭い空間に反響するその声は、無防備で、どこか艶っぽさを帯びている。
紅牙の手が止まることはない。
背中を洗い終えると、彼はそのまま下へと手を滑らせ、蒼斗の引き締まった尻の肉をスポンジで豪快に擦り上げた。
弾力のある大臀筋が手のひらの下で跳ね返る。男同士のスキンシップとしては少々過剰かもしれないが、彼らの間ではこれが日常だった。
「っとと……! 兄貴、ケツまで念入りすぎないか? 変な気分になるぜ」
「馬鹿野郎、戦場じゃケツの毛まで神経尖らせなきゃならねぇんだ。綺麗にしといて損はねぇだろ」
紅牙は鼻で笑い飛ばしたが、その視線は無意識のうちに、蒼斗の股間にぶら下がる雄々しいイチモツへと向けられていた。
激しい運動の後だからか、あるいは熱いシャワーの刺激によるものか、蒼斗のモノは半ば血流を集め、重々しく首をもたげている。
そのサイズは平常時でも立派なものであり、同じ男として無視できない存在感を放っていた。
「へへ、そりゃそうだけどよ。……んじゃ、交代だ」
今度は蒼斗が紅牙の背後に回り、同じように背中を流し始める。
蒼斗の手つきは紅牙よりもリズミカルで、指先で筋肉の隙間を弾くように洗っていく。
熱い湯と泡、そして互いの体温。
密室の中で繰り返される肉体の接触は、彼らの深層心理に眠る本能を徐々に、しかし確実に刺激していた。
「……ふぅ。悪くねぇ手際だ」
「へへっ、マッサージも兼ねてるからな。兄貴の背中、岩みてぇに硬くて洗い甲斐があるぜ」
蒼斗の手が紅牙の脇腹から胸板へと伸びる。
分厚い大胸筋を鷲掴みにするようにして洗うその仕草は、どこか挑発的だ。
泡に塗れた指が、紅牙の胸元にある黄色いヒーロークリスタルに触れる。
敏感な部位ではないはずだが、クリスタルに触れられた瞬間、紅牙の背筋に微弱な電流のような感覚が走った。
「ッ……! おい、そこはあんまり強く擦るんじゃねぇ」
「あ? なんだよ兄貴、感じちゃったのか? 意外と敏感なんだな」
蒼斗がからかうように耳元で囁く。
その吐息が濡れたうなじにかかり、紅牙の喉仏がゴクリと上下した。
嫌悪感はない。むしろ、腹の底から湧き上がる熱い塊が、股間へと血液を送り込もうとしているのを自覚する。
だが、それを認めるわけにはいかない。彼らは高潔なヒーローであり、戦友なのだから。
「ふざけんな。ただのくすぐったさだ。……さっさと流せ」
紅牙は強引に話題を打ち切ろうとしたが、その声色は僅かに上擦っていた。
蒼斗もまた、紅牙の反応を楽しんでいるようでいて、自身の呼吸が少しずつ荒くなっていることに気付いていた。
目の前にある、歴戦の傷が刻まれた強靭な背中。
その圧倒的な雄の肉体に触れることで得られる高揚感は、戦闘中の興奮にも似ているようで、決定的に何かが違っていた。
「二人とも、洗浄は済みましたか? 次のスケジュールの確認がありますので、手早く済ませてください」
シャワールームのスピーカーから、博士の冷静な声が響く。
その声が現実に彼らを引き戻した。
しかし同時に、誰かに監視されているという事実が、この閉鎖空間の背徳感を微かに煽るスパイスともなった。
「おっと、博士からのお呼び出しだ。急がねぇとな」
「ああ……そうだな。風邪引く前に上がるぞ」
二人は残った泡を勢いよくシャワーで洗い流した。
床に流れ落ちる白濁した湯水を見つめながら、紅牙は自身の股間が完全に鎮まっていないことを悟られないよう、タオルを腰に巻く手つきを早めた。
蒼斗もまた、どこか名残惜しそうな視線を紅牙の肉体に走らせつつ、自身のタオルを手に取った。
湿った熱気がこもる更衣室に戻り、彼らは身体を拭う。
タオルの摩擦で火照った肌が赤らみ、筋肉の輪郭がいっそう際立つ。
これからの行動をどうするか。博士の指示に従うか、それとも……。
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スーツを身にまとい、指示に従い博士の下へと急ぐ
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冷涼な空調の風が吹き抜けるメンテナンスルーム。
無機質な電子音が規則正しく刻まれる中、自動ドアが静かに開き、二人のヒーローが入室した。
先ほどまでの湿った熱気とは対照的な、ひやりとした空気が彼らの火照った肌を撫でる。
彼らはすでに戦闘用のヒーロースーツを身にまとっていた。
紅牙の真紅のスーツも、蒼斗の鮮烈な蒼のスーツも、それぞれの鍛え抜かれた肉体に皮膚のように密着し、隆起する筋肉の陰影を露わにしている。
「お疲れ様です。二人とも、時間通りですね」
モニターの光に照らされた白衣の博士が、振り返りもせずに声をかけた。
その手元では、先ほどの訓練データの解析が猛スピードで進められている。
二人は博士の背中に向かって、居住まいを正した。
「おう。シャワー浴びてさっぱりしてきたところだ。……で、次のスケジュールってのは何だ? またシミュレーターか?」
「へへっ、俺ならまだ全然動けるぜ! さっきの訓練じゃ物足りないくらいだったからな!」
蒼斗が自身の力こぶを叩いてアピールする。
だが、その声には僅かな上擦りがあった。
シャワールームでの接触、そして互いの雄の反応を目の当たりにした記憶が、スーツの下の肉体を未だに疼かせているのだ。
博士は椅子を回転させ、ようやく二人に向き直った。
その瞳は理知的で、感情の波は見られない。ただ純粋に、彼らのコンディションを見極めようとする研究者の目だ。
「いえ、実戦形式の訓練は今日はこれで終了です。これより、君たちのエネルギー循環効率のチェックを行います。先ほどの戦闘で、想定以上の数値変動が見られましたから」
「数値変動……? 何かマズいことでもあったのか?」
「いいえ、むしろ逆です。極めて良好。特に互いに密着し、打撃を与え合っている瞬間のエネルギー生成量が飛躍的に向上しています。その原因を特定し、最適化を図る必要があります」
博士はタブレット端末を手に取り、紅牙に近づいた。
「密着」という言葉に、紅牙の眉がピクリと動く。
彼は無意識に、厚い胸板を張って威厳を保とうとしたが、博士の視線は冷静に彼の身体をスキャンしていた。
「紅牙、少し胸を開いてください。クリスタル周辺の生体反応を見ます」
「あ、ああ……分かった」
紅牙が一歩前に出る。博士との距離が縮まる。
博士はゴム手袋をはめた手で、紅牙の胸元にある黄色いクリスタル周辺のスーツ生地に触れた。
指先が、硬質な胸筋の盛り上がりをなぞる。
スーツ越しとはいえ、敏感になっている神経にはその感触がダイレクトに伝わった。
「ふむ……熱を持っていますね。クリスタルだけでなく、筋肉そのものが発熱している。興奮状態が続いている証拠です」
「ぐっ……そ、そうか? ただの運動後の火照りだろ……」
紅牙は視線を逸らし、低い声で誤魔化した。
博士の手は、クリスタルの縁を確かめるように、円を描いて動いている。
その無機質な動作が、逆に紅牙の想像力を掻き立てた。
もしこの手が、検査ではなく愛撫のためのものだったら。
そんな背徳的な思考が脳裏をよぎり、スーツの股間部分が微かに窮屈さを訴え始める。
「兄貴、顔が赤いぜ? 博士に触られて照れてんのかよ」
横で見ていた蒼斗がニヤリと笑う。
だが、博士は間髪入れずに蒼斗の方へと向き直った。
「蒼斗、君もですよ。先ほどのデータを見る限り、君の下腹部周辺にエネルギーの滞留が見られます。そこへ並んでください」
「えっ」と声を漏らす蒼斗の隣に、博士は歩み寄る。
そして、躊躇なく蒼斗の下腹部、丹田のあたりに手を当てた。
「うおっ!? は、博士!?」
「動かないでください。……やはり、硬いですね。筋肉の緊張が解けていない。これではエネルギーの流動が阻害されてしまいます」
博士の手のひらが、蒼斗の引き締まった腹筋の上をゆっくりと圧迫する。
「硬い」という言葉が、筋肉のことなのか、それともその奥で鎌首をもたげつつある別の器官のことなのか。
蒼斗は息を呑み、必死に平静を装った。
しかし、博士の指先が恥骨のあたりをグイと押し込んだ瞬間、蒼斗の身体がビクリと跳ねた。
「んっ……! ちょ、そこは……くすぐったいっていうか……!」
「我慢してください。ここがエネルギー変換の要所なのです。君たちの力の源である精エネルギーは、この奥底から湧き上がってくるものですから」
博士は淡々と事実を述べるだけだ。
そこにいやらしい意図など微塵もない。だからこそ、反応してしまう自分たちが浅ましく思えてくる。
男同士、それも信頼する博士に対して、こんなにも身体が熱くなるなんて。
だが、スーツの中で擦れる自身の敏感な部分は、主人の理性を無視して主張を強めていく。
「博士……その、検査ってのはまだかかるのか? 俺たちも、少し落ち着かねぇんだが」
「重要なプロセスです。君たちが強くなるためには、自身の肉体とエネルギーの動きを完全に把握しなければなりません。……おや?」
博士の手が止まる。
彼は二人の股間周辺を交互に見比べ、不思議そうに首を傾げた。
「どうやら、エネルギーの生成過多のようですね。スーツの収縮圧に対して、局所的な膨張が見られます。これでは循環不全を起こしかねない」
博士の指摘に、二人の顔がカッと熱くなる。
指摘された場所――股間のもっこりとした膨らみは、もはや隠しようがないほどに成長していた。
戦う男の本能として、昂ったエネルギーは行き場を求めている。
それは暴力衝動か、あるいは性衝動か。彼ら自身にも区別がついていないのかもしれない。
「こ、これはだな! その……生理現象っていうか! 俺たちのやる気がみなぎってる証拠だよな、兄貴!」
「そ、そうだッ! 俺たちはいつでも戦えるってことだ! 身体が闘争を求めて疼いてやがるんだよ!」
必死に弁解する二人を、博士は静かに見つめた。
その瞳の奥には、研究者としての探究心と、彼らの管理者としての慈悲深い色が混ざり合っている。
博士は彼らの言い分を否定しなかった。
彼らの肉体が発する熱、そして溢れ出る雄のエネルギーこそが、怪人を倒すための最大の武器であることを知っているからだ。
「なるほど。意欲が高いのは結構です。ですが、その『過剰なエネルギー』を制御できなければ、実戦で隙を生むことになります。……少し、発散させる必要がありますね」
「発散」という言葉が、甘美な響きを持って室内に落ちた。
博士はゴム手袋を外し、素手になった。
その手が何を意味するのか、紅牙と蒼斗は固唾を呑んで見守るしかない。
張り詰めた空気の中、スーツの摩擦音だけが微かに響く。
これ以上の検査は、彼らの理性の堤防を決壊させるかもしれない。
だが、博士の指示は絶対だ。彼らは従うしかない――いや、心のどこかで、従うことを望んでいるのだ。
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「なんてね、ムサいおっさんの手で触られても気持ちよくないでしょうから、発散は各々やってください」博士はからかうように、外した手袋をはめなおす。「検査は以上です、そろそろお腹も減ってきたでしょう、食堂にでも行くといいですよ、先ほど橙馬と玄翠も向かってたようですし」博士はそういうとデータ解析のために端末へと向き直る。
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「なんてね、ムサいおっさんの手で触られても気持ちよくないでしょうから、発散は各々やってください」
博士はからかうように口元を緩めると、外したゴム手袋を慣れた手つきではめなおした。
室内の張り詰めた空気が、その一言で一気に霧散していく。
「検査は以上です。そろそろお腹も減ってきたでしょう、食堂にでも行くといいですよ。先ほど橙馬と玄翠も向かってたようですし」
博士はそれだけ告げると、二人の反応を楽しむこともなく、データ解析のために端末へと向き直ってしまった。
キーボードを叩く乾いた音が、再び静寂を取り戻した室内に響く。
取り残された紅牙と蒼斗は、呆気にとられた表情で顔を見合わせた。
「あ……? なんだよ、冗談かよ……。脅かしやがって」
紅牙は大きく息を吐き出し、強張らせていた肩の力を抜いた。
安堵したような、しかしどこか拍子抜けしたような複雑な色がその顔に浮かぶ。
股間で疼いていた熱い塊も、主人の動揺を感じ取ったのか、あるいは行き場を失った無念さからか、わずかにその主張を弱めたようだった。
「へへっ……博士も人が悪いぜ。俺、マジで何かされるかと思ってドキドキしちまったよ」
蒼斗は苦笑いを浮かべながら、自身の後頭部をガシガシと掻いた。
だが、その頬にはまだ微かな紅潮が残っており、博士の「手技」を想像してしまった興奮が完全には引いていないことを物語っていた。
二人は一度だけ博士の背中に視線を送ったが、研究に没頭するその姿に声をかけるのをためらい、無言のままメンテナンスルームを後にした。
基地内の食堂は、広々としたスペースに機能的なテーブルと椅子が並べられた、清潔だが殺風景な空間だった。
しかし、そこに集う男たちの存在感が、無機質な空気を濃厚なものへと変えている。
テーブルの一角に、対照的な二人のヒーローの姿があった。
ベテランの玄翠と、新人の橙馬だ。
「……橙馬、食べるのが早すぎるぞ。よく噛んで消化吸収を良くするのも、身体作りの基本だ」
玄翠は深緑色のスーツに身を包み、落ち着いた動作で高タンパクの特別食を口に運んでいた。
その重厚な肉体と、年輪を感じさせる渋い面持ちは、歴戦の猛者特有の静かな威圧感を放っている。
「うるせーなオッサン。俺は腹が減ってんだよ。それに、今の俺には質より量が必要なんだ」
対する橙馬は、山盛りの肉料理を野性的に頬張っていた。
浅黒い肌に、若々しく引き締まった筋肉。その態度は生意気そのもので、長老格である玄翠に対しても敬語を使おうとはしない。
彼もまた、橙色のスーツを皮膚のように密着させ、若さゆえの過剰なエネルギーを発散させているようだった。
そこへ、紅牙と蒼斗が合流する。
まだどこか浮足立った様子の二人を見て、橙馬が意地悪く口角を上げた。
「お、お疲れさん。なんだよ先輩たち、随分と顔が赤いじゃねぇか。博士にたっぷりイジメられてきたのか?」
「うっせぇよ橙馬! ただのトレーニングの余韻だ。お前こそ、玄翠さんに怒られてるんじゃねぇのか?」
蒼斗は図星を突かれたようなバツの悪さを隠すように、大げさに声を張り上げて橙馬の隣にドカッと腰を下ろした。
紅牙もまた、玄翠の向かいの席に重々しく座り込む。
四人の巨躯が一つのテーブルを囲むと、それだけで周囲の空気密度が上がったような圧迫感がある。
「ふん、相変わらず口の減らねぇガキだ。……玄翠さん、こいつの教育係も楽じゃねぇな」
「まあな。だが、元気があるのは良いことだ。……ところで紅牙、お前の気の流れが少し乱れているようだが、何かあったか?」
玄翠の鋭い眼光が、紅牙の胸元から下腹部あたりを一瞬だけ捉えた。
風の力を操り、気の流れを読むことに長けた玄翠には、紅牙が抱えている「未処理の熱」が透けて見えているのかもしれない。
紅牙は思わず足を組み替え、股間の膨らみをテーブルの下に隠した。
「な、何でもねぇよ。ちょっとシミュレーターの設定がハードだっただけだ。……それより飯だ、飯! 腹が減って死にそうだぜ」
紅牙は慌ててメニュー端末を操作し、話題を逸らそうと試みる。
その様子を見て、橙馬がニヤリと目を細めた。
「へぇ……ハードなシミュレーション、ねぇ。先輩の『剛剣』も錆びついてんじゃないの? 俺ならもっと上手く立ち回れるけどな」
「なんだとぉ? てめぇ、口だけは一丁前だな! 実戦じゃまだ足手まといのくせに!」
若い蒼斗と橙馬が火花を散らす横で、年長者たちは静かに視線を交わした。
男だけの空間、張り詰めたライバル心、そして極限まで鍛え上げられた肉体。
それらが複雑に絡み合い、食堂には食事の場とは思えないほどの熱っぽい空気が漂い始めていた。
彼らの本能は、常に何らかの刺激を求めている。
食欲も、闘争心も、そして性欲も。全ては同じエネルギーの異なる側面に過ぎないのだ。
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食後の腹ごなしに、紅牙は玄翠に戦闘訓練へ付き合うよう提案する。玄翠は快く受け入れ、残った二人も「じゃぁ俺たちもやるか」と一緒に訓練室へ向かう
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「なぁ玄翠さん、飯も食ったことだしよ。少し身体を動かさねぇか? さっきの訓練じゃ、どうも不完全燃焼だったみたいでな」
紅牙は最後の肉片を飲み込むと、ナプキンで口元の油を乱暴に拭いながら切り出した。
その瞳には、隠しきれない好戦的な光が宿っている。
腹の底で燻る熱を、何か別の形――もっと直接的で暴力的な形で発散させなければ気が済まないようだった。
「……ふむ。食休みもそこそこに訓練か。若いな」
玄翠は静かに茶を啜り、湯呑みを置く。
その表情は穏やかだが、眼光には歴戦の戦士特有の鋭さが戻っていた。
「いいだろう。私の身体も少し鈍っていたところだ。お前のその有り余るエネルギー、私が受け止めてやる」
「おっ! マジかよ! じゃあ俺たちもやるか、橙馬!」
蒼斗が身を乗り出し、向かいの橙馬を指差した。
「はん、望むところだぜ先輩。さっきの『足手まとい』発言、たっぷりと後悔させてやるよ」
橙馬は不敵な笑みを浮かべ、バキボキと指関節を鳴らして立ち上がった。
四人の男たちは頷き合い、闘争の気配を纏わせながら食堂を後にした。
広大なトレーニングルームに、再び重低音が響き渡る。
先ほどまでの機械的なシミュレーター相手とは違う、生身のヒーロー同士がぶつかり合う音だ。
「オラァァッ!! 流石だな玄翠さんッ! ビクともしねぇ!」
紅牙の丸太のような回し蹴りが、玄翠のガードした腕に炸裂する。
ドォォン!! という衝撃音が空気を震わせるが、玄翠は両足でしっかりと地面を掴み、その場から一歩も動かない。
緑色のスーツに包まれた玄翠の肉体は、あたかも大樹のように揺るぎなかった。
「力任せだな、紅牙。……だが、悪くない重さだ」
玄翠は低く唸ると、防御を解くや否や、目にも止まらぬ速さで掌底を繰り出した。
それは「風」の力を纏った一撃であり、不可視の空気の塊が紅牙の腹部に叩き込まれる。
ドスッ!!
「ぐぅッ……!!」
紅牙の身体がくの字に折れる。
内臓を揺さぶられるような衝撃。息が詰まり、胃液が逆流しそうになる苦痛。
だが、紅牙は退かない。
むしろ、その痛みこそが彼の導火線に火をつけた。
腹筋をギュッと収縮させ、玄翠の手首を筋肉で捕らえるかのように力を込める。
「へへ……! 効くぜ、オッサンの一撃はよぉ……! 腹の奥まで響いてきやがる!」
苦痛に歪む顔の中に、恍惚とした色が混じる。
玄翠のような熟練の男に、自身の鍛え上げた肉体を蹂躙される感覚。
それは屈辱的でありながら、どこか背徳的な悦びを呼び覚ます。
「ほう、今のを受けて笑うか。……ならば、これならどうだ?」
玄翠は冷静に間合いを詰めると、流れるような動作で紅牙の懐に潜り込んだ。
硬化した拳が、紅牙の脇腹、みぞおち、そして分厚い胸板へと連打される。
ボコッ、ボコッ、グシャッ!!
避けない。紅牙は仁王立ちのまま、その全ての打撃を正面から受け止めた。
「ガッ、ぐッ、うおおおッ!!」
スーツの下で筋肉が悲鳴を上げ、毛細血管が破れて痣が広がっていくのがわかる。
痛みとともに熱が広がる。
殴られるたびに、紅牙の股間の楔は、戦闘による興奮と混同された熱によって硬度を増していった。
玄翠という絶対的な「攻め」の存在に圧倒されることで、紅牙の本能が雌のように疼き始めているのだ。
一方、部屋の反対側では、若手二人が激しい肉弾戦を繰り広げていた。
「らぁッ!! どうした先輩、動きが遅いんじゃねぇのか!?」
橙馬の拳が、蒼斗の顔面を捉える。
バゴォッ!!
蒼斗の頭が大きく仰け反り、口元から鮮血と唾液が飛び散った。
しかし、蒼斗は倒れない。首の筋肉を張って衝撃を殺し、血に濡れた口元を拭って獰猛に笑った。
「ッ……! いいパンチ打ちやがる……! 生意気な後輩の分際で、俺の顔に傷をつけやがって!」
蒼斗の瞳が潤んでいる。
痛い。殴られて痛くないはずがない。
だが、橙馬のような生意気な年下に、一方的に殴られ、肉体を傷つけられる状況に、蒼斗の脳髄は麻薬的な快楽物質を分泌していた。
「へっ、強がり言ってんじゃねぇよ。その顔、もっとぐちゃぐちゃにしてやるから覚悟しな!」
橙馬はさらに踏み込み、蒼斗の腹部へ膝蹴りを突き刺した。
ドゴォォン!!
蒼斗の腹筋が限界まで押し込まれる。
内側から突き上げられるような感覚に、蒼斗は思わず声にならない喘ぎを漏らした。
「あぐッ……ぅ……!!」
その声はあまりに艶めかしく、攻撃した橙馬の動きが一瞬止まるほどだった。
蒼斗は膝をつきかけながらも、橙馬の太い太腿にしがみつくようにして体勢を立て直した。
密着する肉体。橙馬の固い筋肉の感触と、雄臭い汗の匂いが鼻腔を満たす。
「はぁ、はぁ……! まだまだだ、もっと来いよ橙馬! お前のその自慢のパワーで、俺を壊してみろよッ!」
蒼斗は挑発しながら、自身の胸元にあるクリスタルを激しく発光させた。
バチバチッ!!
青い雷撃が迸り、自身の肉体を駆け巡る。それは攻撃のためではなく、痛みで鈍りかけた神経を無理やり活性化させる自傷行為に近いものだった。
電流の刺激と打撃の痛みが混ざり合い、蒼斗の理性を白濁させていく。
股間の膨らみはスーツの限界を試すように張り詰め、先端からは透明な液がじわりと滲み出していた。
「チッ、変態かよアンタ……! そんなに望むなら、遠慮なくやってやる!」
橙馬は蒼斗の言葉に煽られ、さらに攻撃のピッチを上げた。
互いの拳が肉にめり込み、骨がきしむ音が絶え間なく響く。
もはや訓練の域を超え、本能のままに肉体をぶつけ合う求愛行動のようでもあった。
「ぬぅんッ!!」
玄翠の重い一撃が、紅牙の顎を捉えた。
紅牙の巨体が揺らぎ、膝から崩れ落ちそうになる。
だが、玄翠は倒れることを許さなかった。
倒れようとする紅牙の襟首を掴み、無理やり立たせると、至近距離でその目を見据えた。
「まだだ、紅牙。まだ意識はあるな? お前のタフさはこんなものではないはずだ」
玄翠の声は冷徹で、それゆえに支配的だった。
紅牙は朦朧とする意識の中で、目の前の男の圧倒的な存在感に酔いしれていた。
自分よりも年上の、枯れているようでいて底知れない精力を秘めた男。
その男に掴まれ、殴られ、支配されている。
「あぁ……玄翠さん……! もっとだ、もっと俺に教えてくれ……! アンタの強さを、身体に刻み込んでくれ……!」
紅牙は無防備に胸を晒し、次の攻撃を懇願した。
その股間は完全に勃起し、赤いスーツをテントのように押し上げている。
玄翠はその無様な姿を一瞥したが、何も言わずに拳を握り直した。
教育的指導という名目のもと、彼らの歪んだ欲望の儀式は続いていく。
汗と血、そして男たちの熱気がトレーニングルームを満たしていた。
壁際のモニター越しに、博士はその様子を無表情で観察している。
バイタルサインは危険域に達しているが、ヒーローエナジーの数値は異常なほどの高まりを見せていた。
彼らの肉体は、限界を超えた先にある何かに手を伸ばそうとしている。
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訓練終了後、興奮冷めやらぬ紅牙と蒼斗はシャワー室で自慰にふける
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限界を超えた激闘の末、玄翠と橙馬は先にロッカールームへと引き上げていった。
残された紅牙と蒼斗は、筋肉の痙攣が収まらぬまま、重い足取りで再びシャワールームへと雪崩れ込んだ。
先ほどの戦闘訓練で流した汗と血、そして抑えきれない雄の分泌物が混ざり合い、二人の身体は強烈なフェロモンを発散していた。
タイル張りの床に、荒い呼吸音だけが反響する。
もはや言葉はいらなかった。
互いの股間は、スーツを脱ぎ捨てた開放感を得てもなお、赤黒く充血して天を突くように屹立している。
「くそッ……。玄翠の旦那にやられた脇腹が疼きやがる……。だが、それ以上に……」
「はぁ、はぁ……。兄貴もかよ……。俺も、橙馬の野郎に殴られたところが熱くて……頭がおかしくなりそうだ」
二人は逃げるようにして隣り合うシャワーブースへと滑り込んだ。
薄い仕切り一枚。
勢いよく熱湯を噴出させるシャワーの音だけが、彼らの間に横たわる理性の壁だった。
だが、その壁はあまりにも薄く、脆い。
「ふぅぅッ……!!」
紅牙は熱い湯を頭から浴びると同時に、我慢の限界を迎えた自身の剛直を太い指で握りしめた。
ごつごつとした節くれだった手が、張り詰めた竿を乱暴に擦り上げる。
脳裏に蘇るのは、先ほどの玄翠の圧倒的な暴力だ。
抗えない力でねじ伏せられ、蹂躙される感覚。
痛みと屈辱が、彼のマゾヒスティックな本能を刺激し、陰茎をかつてないほどの硬度へと導いていく。
「(ちくしょう、オッサン相手に感じちまうなんて……! だが、この支配される感覚、たまらなく興奮しやがる……ッ!)」
紅牙の手首の動きが加速する。
溢れ出るカウパーが潤滑油となり、ジュポ、ジュポと卑猥な水音を立て始めた。
隣のブースからも、似たような粘着質な音が漏れ聞こえてくる。
蒼斗もまた、自身の欲望に正直になっていた。
「んっ……! くぅ……ッ!」
蒼斗は壁に片手をつき、自身の若く逞しいイチモツを扱いていた。
彼が思い出していたのは、生意気な後輩、橙馬との取っ組み合いだ。
密着した筋肉の感触、荒々しい息遣い、そして容赦なく叩き込まれる拳の痛み。
それら全てが、蒼斗の性欲の薪となっていた。
「(あいつの太腿、硬かったな……。俺を組み敷く時の、あの獣みたいな目……ゾクゾクしやがった……!)」
蒼斗はカリの裏側、敏感な帯の部分を親指で執拗に弄り回した。
快感のあまり膝が震え、太腿の内側の筋肉が痙攣する。
シャワーの音が激しい水音をかき消してはいるが、互いの荒い息遣いまでは隠せない。
隣で兄貴分である紅牙が、同じように男根を扱いているという事実。
その背徳感が、蒼斗の理性をさらに融解させていく。
「蒼斗……お前、やってんのか……?」
紅牙の低い、しわがれた声が仕切り越しに聞こえた。
その声には、咎める色はなく、むしろ共犯者を求めるようなねっとりとした熱が帯びていた。
「っ……! ああ……兄貴こそ……すげぇ音、させてんじゃねぇか……」
「へっ……仕方ねぇだろ……。こんなに滾っちまったんだ……。誰のせいだと思ってやがる」
言葉を交わすことで、互いの興奮は相乗効果で高まっていく。
もはや隠す必要はない。ここは男たちの欲望の掃き溜めだ。
紅牙は自身の二つの睾丸を掌で重さを確かめるように揉みしだきながら、亀頭をリズミカルに刺激した。
太い血管が浮き上がり、赤紫色の怒張した先端が涙を流している。
「くぅッ、おお……ッ! いいぞ、その声……もっと聞かせろ蒼斗ォ!」
「あぐッ、はぁ、はぁッ! 兄貴、俺もう……我慢できねぇ……ッ!」
蒼斗のストロークは最高速に達していた。
腰をくねらせ、シャワーの湯を全身で受け止めながら、快楽の波に身を委ねる。
脳髄が痺れ、視界が白く明滅する。
「出すぞ……ッ! 俺も、いくッ!!」
「イッ、イぐッ!! うあぁぁああーーッ!!」
ほぼ同時だった。
紅牙の太い一物がビクビクと脈打ち、大量の白濁液をタイルの壁へと勢いよく吐き出した。
ドロリとした濃密な精が、放物線を描いて飛び散る。
蒼斗もまた、若さに任せた勢いで自身の腹部から胸元にかけて、白い飛沫をぶちまけていた。
「ぐうぅぅッ……!! はぁ、はぁ、はぁ……ッ」
「んあぁ……ッ、はぁ……はぁ……ッ」
絶頂の余韻に浸りながら、二人の身体から力が抜けていく。
シャワーの湯が、飛び散った精液を洗い流し、排水溝へと吸い込まれていく。
白く濁った湯水が渦を巻いて消えていく様を、二人はぼんやりと見つめていた。
賢者タイム特有の気怠さと、欲望を吐き出した爽快感が同居する。
「……ふぅ。とんだデザートがついちまったな」
「へへ……全くだ。でも、すっきりしたぜ。これで明日も戦える」
二人は照れ隠しのように軽口を叩き合うと、綺麗に身体を洗い直し、シャワールームを後にした。
ロッカールームで服を着ている間も、互いの視線が合うと気まずそうに逸らすが、その口元には満足げな笑みが浮かんでいた。
基地の廊下に出ると、すでに夜の帳が下りている。
静寂に包まれた基地内で、それぞれの自室へと戻る時間だ。
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蒼斗が部屋の前まで戻ってくると、自分の部屋の前に橙馬がいた。「オッス!」先ほどの戦闘訓練が思いのほか楽しかったようで、橙馬は興奮気味に反省会を蒼斗としようとやってきたようだ
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シャワールームでの熱狂を終え、幾分か軽くなった身体を引きずるようにして居住区画の廊下を歩いていた蒼斗は、自室の前で足を止めた。
無機質な金属製のドアの前、腕組みをして壁に背を預けている人影があったからだ。
トレードマークの橙色のパーカーを羽織り、浅黒い肌を蛍光灯の下で輝かせている男――橙馬だった。
「オッス! 遅かったじゃねぇか、先輩」
橙馬は蒼斗の姿を認めるなり、白い歯を見せてニカッと笑った。
その表情には、先ほどの激しい殴り合いの疲れなど微塵も感じさせない、若々しいエネルギーが満ち溢れている。
対する蒼斗は、先刻の「処理」による賢者タイムの真っ只中であり、内心で小さく舌打ちしそうになるのを堪えた。
「……橙馬か。なんだよ、こんな時間に。さっさと寝て明日への体力を温存するのが新人の務めだろ」
「つれないこと言うなって。先ほどの戦闘訓練、思いのほか楽しかったからさ。ちょっと興奮が冷めなくて」
橙馬は一歩踏み出し、蒼斗との距離を詰めた。
シャワーを浴びたばかりのはずだが、彼の身体からは再び微かな汗の匂いが漂い始めている。
それは運動後の不快な臭気ではなく、新陳代謝の活発な雄が放つ、むせ返るようなフェロモンに近い。
「反省会、しようぜ。アンタの今日の動き、悪くなかったけど……俺から見ればまだまだ改善の余地アリだと思ったんだよな」
生意気な口調で言い放つ橙馬の瞳は、ギラギラとした光を宿している。
それは単なる戦闘データの分析を求めている目ではない。
戦いの余韻、肉体がぶつかり合った感触を、言葉を通してもっと味わいたいという飢えのようなものが見え隠れしていた。
「はぁ……。お前なぁ、先輩捕まえて上から目線かよ。……ま、いいけどよ。立ち話もなんだ、入れよ」
蒼斗は溜息混じりにセキュリティロックを解除した。
プシューという音と共にドアがスライドする。
橙馬は「お邪魔しまーす」と軽い調子で、蒼斗のテリトリーへと足を踏み入れた。
蒼斗の部屋は、必要最低限の家具しか置かれていない殺風景な空間だった。
ベッドとデスク、そしてトレーニング用のダンベルセットが部屋の隅に鎮座しているのが、いかにも肉体派ヒーローの住処らしい。
二人は狭い部屋の中で向かい合った。
密室になると、橙馬の放つ熱気がより一層鮮明に感じられる。
「へぇ、意外と片付いてんじゃん。もっと筋肉バカらしく散らかってるかと思った」
「うるせぇよ。俺は几帳面なんだ。……で? 反省会ってのは何だ。さっきの膝蹴りの自慢話か?」
蒼斗はベッドの端に腰を下ろし、橙馬を見上げた。
橙馬はデスクの椅子を引いて反対向きに跨ると、背もたれに腕を乗せて蒼斗をじっと見据えた。
「自慢じゃなくて事実の確認さ。あの時、アンタ俺の蹴りを避けなかったろ。腹筋で受け止めた」
「ああ、それが俺のスタイルだからな。避けるなんて女々しい真似はしねぇ。全て受け切って、倍にして返すのが俺たち……雷の流儀だ」
「それだよ。あの瞬間の筋肉の硬直……マジですげぇと思ったぜ。俺の膝が砕けるかと思った」
橙馬は椅子から立ち上がり、蒼斗の目の前まで歩み寄った。
そして、躊躇なく蒼斗の腹部に手を伸ばした。
熱を持った掌が、Tシャツの上から蒼斗の腹直筋を鷲掴みにする。
「おいッ……! いきなり何しやがる」
「確認だよ。まだ硬いのかどうか」
橙馬の指が、布越しに筋肉の溝をなぞる。
蒼斗は先ほどのシャワーでの情事を思い出し、身体がカッと熱くなるのを感じた。
出したばかりだというのに、他人の手――それも生意気で逞しい年下の男の手が触れているという事実が、神経を逆撫でする。
「うん、やっぱりいい筋肉してる。俺の蹴りを受けても、内臓までダメージが届いてねぇ。表面の筋肉だけで衝撃を殺しちまってるんだな」
「……くすぐったいんだよ。離せ」
「照れんなって。ほら、ここ。少し青くなってる。俺がつけた勲章だな」
橙馬は悪びれる様子もなく、Tシャツをまくり上げた。
露わになった蒼斗の引き締まった腹部には、確かに赤黒い打撲痕が残っていた。
橙馬はその痣を、まるで愛しいものでも扱うかのように親指で優しく撫でた。
ザラついた指の腹が、敏感になっている皮膚を擦る。
「んッ……! そこは……まだ痛むんだよ……!」
「痛い? 嘘つけ。アンタ、殴られてる時あんなに気持ちよさそうな顔してたくせに」
橙馬の指摘に、蒼斗の言葉が詰まる。
図星だった。戦闘中の高揚感と痛みは、彼にとって快楽と同義語になりつつある。
橙馬のニヤついた顔が近づいてくる。
若い男特有の、強引で遠慮のない距離感。
蒼斗は視線を逸らそうとしたが、橙馬の強い眼力に捕らえられて動けなかった。
「なぁ先輩。実は俺、まだ収まってねぇんだよな」
「……は? 何がだよ」
蒼斗は気づかないふりをしたが、橙馬の視線は蒼斗の腹筋からさらに下、股間のあたりへと舐めるように移動していた。
そして、橙馬自身のスウェットパンツもまた、テントを張るように大きく隆起しているのが見て取れた。
若さゆえの回復力か、それとも戦闘の興奮が持続しているのか。
橙馬のそれは、蒼斗が先ほどシャワーで鎮めたものと同等か、それ以上のサイズで自己主張していた。
「とぼけんなよ。アンタはもう一発抜いてきたのか知らねぇけど、俺はまだパンパンなんだよ。この昂り、どうにかしてくれねぇ?」
「なッ……!? て、てめぇ……! 部屋の前で待ってたのは、そういうことかよ!」
蒼斗は顔を赤くして怒鳴ったが、拒絶の言葉は出てこなかった。
目の前にある、暴発寸前の若いエネルギー。
それを向けられているという事実に、蒼斗の中の雄の本能が再び疼き始めていたのだ。
シャワーで出し切ったと思っていたが、それは単なる一時的な休息に過ぎなかったらしい。
「反省会の一環だろ? 肉体言語ってやつでさ。アンタのその硬い身体で、俺の熱を受け止めてくれよ」
橙馬は蒼斗の太腿の間に強引に膝を割り込ませた。
グリグリと押し付けられる硬い感触。
スウェット越しでも分かる、熱く脈打つ剛直な質量。
蒼斗の呼吸が荒くなる。
拒むべきか、受けるべきか。いや、ヒーローとして、後輩の「指導」をするのも務めではないか。
そんな都合の良い言い訳が脳裏をよぎる。
「……ったく、しょうがねぇガキだな。反省会だか何だか知らねぇが……ヒーローがそんな浅ましいモンぶら下げて歩くんじゃねぇよ」
蒼斗は諦めたように――あるいは誘うように、太腿を開いた。
それは橙馬に対する降伏宣言であり、同時に新たな戦いの開始の合図でもあった。
橙馬の顔がパァッと明るくなる。
「へへっ、さすが先輩! 話が早くて助かるぜ!」
橙馬は蒼斗の肩に手を置き、体重をかけて押し倒そうとする。
ベッドのスプリングがきしみ、男二人の重みを支える。
密室の中で、再び雄たちの熱い夜が始まろうとしていた。
だが、その時だった。
蒼斗の部屋の通信端末が、無機質なアラート音を奏でたのは。
ピピピピ、ピピピピ。
「あ? なんだよ、いいところなのに……」
「……博士からだ。緊急連絡かもしれねぇ」
水を差された橙馬は露骨に不機嫌な顔をしたが、蒼斗は少しホッとしたような、残念なような複雑な表情で端末へと手を伸ばした。
画面に表示されたのは、博士からのテキストメッセージだった。
そこには、明日のスケジュール変更と、ある「特別な実験」への参加要請が記されていた。
「……おい、橙馬。明日の朝一で、俺とお前、それに紅牙の兄貴と玄翠さんも含めて全員集合だとよ」
「はぁ? 全員で? 何させられるんだよ」
「さあな。『新型スーツの適合テスト及び、限界耐久試験』……だとさ」
「限界耐久試験」。
その響きに、二人は顔を見合わせた。
博士の考える「試験」が、単なる体力測定で終わるはずがないことは、これまでの経験則で理解していた。
橙馬の股間の隆起はまだ収まっていないが、未知の試練への予感が、彼らの性欲とは別の興奮を呼び覚ました。
「へっ……面白そうじゃんか。限界、ねぇ……。俺たちの限界をどこまで引き出してくれるのか、見ものだな」
「ああ。明日もハードになりそうだ。……悪いな橙馬、続きはお預けだ。明日に備えて寝ねぇと、博士にしごかれるぞ」
蒼斗は橙馬の胸板を軽く押し返した。
橙馬は不満げに鼻を鳴らしたが、それ以上強引に迫ることはしなかった。
彼にとっても、ヒーローとしての強さの追求は性欲以上に重要なアイデンティティなのだ。
「チッ……覚えてろよ先輩。この借りは、明日の試験でたっぷりと返させてもらうからな」
橙馬は捨て台詞を残し、股間を膨らませたまま部屋を出て行った。
静寂が戻った部屋で、蒼斗は大きく息を吐き出し、ベッドに大の字になった。
天井を見上げながら、自身の鼓動がまだ速く打っているのを感じる。
明日の試験。そして、橙馬との未遂に終わった行為。
予感めいた熱が、身体の芯に残っていた。
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橙馬は男同士でヤることに抵抗ないのか?蒼斗はそんなことを考える。「そんなの・・・ダメだろ」そう独りごち、次はちゃんと断ろうと決心し、眠りにつく
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橙馬が出て行った後の部屋には、重苦しい静寂と、微かに残る若い雄の熱気が漂っていた。
蒼斗は天井の一点を見つめたまま、自分の掌を握ったり開いたりしていた。
先ほどの光景――橙馬の燃えるような瞳、強引に押し付けられた太腿の感触、そして何よりも、それに反応してしまった自分自身。
「……男同士で、あんなこと……」
独り言が、狭い部屋の空気に溶けていく。
彼らはヒーローだ。共に戦い、背中を預け合う仲間だ。
そこに性的な感情を持ち込むなんて、あってはならないことだ。
ましてや、相手は生意気盛りの後輩。
「そんなの……ダメだろ。絶対におかしい」
蒼斗は自分に言い聞かせるように強く呟くと、乱暴に寝返りを打った。
そうだ、あれはただの事故だ。戦闘の高揚感が誤った方向へ爆発しかけただけ。
次はちゃんと断ろう。先輩として、あいつの性根を叩き直してやるんだ。
そう決心し、蒼斗は重い瞼を閉じた。
だが、夢の中にまで橙馬の熱っぽい視線が現れないという保証は、どこにもなかった。
翌朝。
訓練室の空気は、張り詰めた緊張感で満たされていた。
中央には、紅牙、蒼斗、玄翠、橙馬の四人が一列に整列している。
彼らの前には、白衣を翻した博士が立っていた。
いつもと変わらぬ冷静な表情だが、その手元には見慣れぬ黒いケースが置かれている。
「おはようございます。昨夜の通達通り、これより『限界耐久試験』を開始します」
博士の声が朗々と響く。
四人のヒーローたちは、それぞれのスーツに身を包み、博士の言葉を待った。
蒼斗の顔には僅かに寝不足の色が見えるが、気丈に背筋を伸ばしている。
隣の橙馬は、時折蒼斗の方をチラチラと見ては、意味ありげに口角を上げていた。
「今回の試験目的は、極限状態におけるエネルギー制御能力の測定です。そのために、君たちにはこの新型インナースーツを着用のうえ、通常の模擬戦を行ってもらいます」
博士がケースを開くと、そこには極薄の、まるで第二の皮膚のような漆黒のインナーが収められていた。
一見何の変哲もないが、表面には微細な電子回路のような模様が走っている。
「あ? なんだこりゃ。いつものスーツの下に着ろってのか?」
「ええ。このインナーは、君たちの筋肉の微細な動きを感知し、電気刺激によって強制的に収縮を補助します。理論上、身体能力を120%まで引き上げることが可能です」
「……ほう。強制的な収縮、か。副作用はないのか?」
玄翠が鋭く問いかける。
博士は眼鏡の位置を直しながら、淡々と答えた。
「副作用というほどではありませんが……感度が著しく上昇します。神経系に直接干渉するため、外部からの刺激――打撃や摩擦、温度変化に対して、通常時の数倍敏感になるでしょう」
「敏感になる」。
その言葉に、四人の男たちの間にざわめきが走った。
戦う男にとって、感覚が鋭敏になることは諸刃の剣だ。
敵の動きを察知しやすくなる一方で、受ける苦痛も増大する。
そして、苦痛以外の刺激もまた……。
「へっ、感度ビンビンで戦えってことかよ。面白ぇじゃん」
「お、おい橙馬! ニヤニヤすんな! ……博士、それってつまり、ちょっと殴られただけでも激痛ってことですか?」
「痛みだけではありません。あらゆる感覚が増幅されます。君たちが普段、戦闘の興奮として処理している熱もね」
博士の意味深な言葉に、蒼斗は昨夜の出来事を思い出して喉を鳴らした。
断る決意をしたばかりなのに、こんな状況で橙馬と肌を合わせることになれば、どうなってしまうのか。
だが、拒否権はない。これは公的な任務であり、自身の強化のためのプロセスなのだ。
数分後、四人は指定されたインナースーツを着用し、その上からいつものヒーロースーツを纏って再び整列していた。
見た目には変化はない。
しかし、彼らの表情は一様に硬く、そしてどこか落ち着きがなかった。
「くっ……なんだこりゃ。スーツの裏地が擦れるだけで、全身がゾワゾワしやがる……」
紅牙が太い腕を抱くようにして身震いする。
インナーの締め付けは強烈で、全身の筋肉を万力で締め上げられているようだ。
特に、乳首や股間といった皮膚の薄い部分は、布地の摩擦だけで電流が走るような刺激を受けていた。
「ううッ……これ、キツすぎませんかね……。立ってるだけで、なんか……変な汗が出てくる……」
「アンタら情けねぇな。俺は結構気に入ってるぜ? 全身の神経が研ぎ澄まされてる感じがしてよ」
橙馬は強がっているが、その呼吸は浅く速くなっている。
敏感になった神経が、スーツの中で圧迫されている自身の剛直な部分の存在感を、嫌というほど脳に伝えているのだ。
「装着完了ですね。では、ペアを組んでください。紅牙と玄翠、蒼斗と橙馬です」
最悪の組み合わせだ、と蒼斗は天を仰いだ。
よりにもよって、意識しまくっている橙馬と組まされるとは。
「ルールは簡単。どちらかが膝をつくまで、あるいは『降参』するまで戦い続けてください。ただし、インナーの効果で君たちの耐久値は見かけ上向上していますが、感覚的な限界はすぐに訪れるはずです。精神力でそれをねじ伏せなさい」
「始め!」
開始のブザーと共に、橙馬が弾かれたように飛び出した。
速い。
インナーの補助によるものか、その踏み込みは昨日よりも鋭く、床を蹴る音が爆発音のように響く。
「行くぜ先輩ッ!! その敏感になった身体で、俺の愛を受け止めてくれよなァ!」
「なッ……!? ふざけんなッ!」
蒼斗は反射的に腕を交差させ、ガードを固めた。
ドゴォッ!!
橙馬の重い拳が、蒼斗の前腕に叩き込まれる。
「ぐあぁッ……!!? っ……!?」
蒼斗の口から、苦悶とも嬌声ともつかない声が漏れた。
痛い。骨が軋むほどの衝撃。
だがそれ以上に、接触した箇所の神経が異常発火し、脳髄を痺れさせるような強烈な電気信号を送ってきたのだ。
ただ殴られただけなのに、まるで性感帯を直接ごりごりと刺激されたかのような感覚。
「おーおー、いい声出すじゃんか。やっぱ効いてるんだな?」
橙馬はニヤリと笑うと、追撃の手を緩めない。
ボディへの連打。
ドスッ、ガッ、ボゴォッ!
一撃ごとに、蒼斗の腹筋が波打ち、インナーが皮膚を擦り上げる。
「あっ、ぐッ、うぅッ……!! やめ……そこは……ッ!」
防御のために腹に力を入れるたび、下腹部への圧力が強まり、敏感になった股間の逸物がインナーに押し付けられる。
痛みと快感の境界が曖昧になり、蒼斗の膝がガクガクと震え始めた。
昨夜の決意など、この圧倒的な生体反応の前では無力に等しい。
「どうしたよ、反撃しねぇのか? それとも、気持ちよすぎて動けねぇのか?」
橙馬がさらに距離を詰め、蒼斗と組み合う体勢になる。
互いの胸板が押し付け合い、荒い息が交差する。
至近距離で見つめ合う視線。
橙馬の瞳孔は興奮で開ききっており、獲物を甚振る肉食獣のそれだった。
密着した下半身から、橙馬の硬い突起が蒼斗の太腿に押し当てられるのが分かる。
インナー越しでも、その熱量と硬度は鮮明に伝わってきた。
「ち、ちげぇ……! 離れろ、この……変態野郎ッ!」
蒼斗は必死に橙馬を突き飛ばそうとするが、力が入らない。
いや、力は入っているのだが、筋肉を動かすこと自体が快感に変換されてしまい、腰砕けになってしまうのだ。
「(くそッ、なんだこれ……! 身体中が熱い……! あいつに触れられてる場所全部が、疼いて仕方ねぇ……!)」
一方、隣のコートでは紅牙と玄翠が激突していた。
「ぬぅぅんッ!!」
紅牙の豪腕が風を切るが、玄翠は最小限の動きでそれを躱す。
そしてすれ違いざま、紅牙の太い首筋に手刀を這わせた。
ただ撫でるような接触。
だが、今の紅牙にとってそれは、灼熱の鉄棒を押し当てられるに等しい刺激だった。
「ひぁッ……!!?」
紅牙のような巨漢から出たとは思えない、裏返った悲鳴。
彼は自身の首を押さえ、よろめいた。
赤黒い顔には脂汗が滲み、荒い呼吸と共に口端から涎が垂れている。
「……脆いな。神経への干渉だけで、こうも崩れるか」
「ハァ、ハァ……! うるせぇ……! 玄翠さんよぉ……わざと、急所外して撫でただろ……! ゾクゾクしちまって……たまんねぇよ……!」
紅牙の股間は、もはや隠しきれないほどに膨れ上がり、インナーの生地を限界まで引き伸ばしている。
攻撃を受けるたび、防御するたび、その摩擦で勝手に射精寸前まで追い込まれていく地獄。
しかし、その地獄こそが彼らのマゾヒズムを極限まで満たしていた。
「データ収集は順調ですね。脳波のβ波が異常値を示していますが、戦闘継続には支障ありません。……さあ、もっと激しく、限界を超えてください」
スピーカーから響く博士の無慈悲な声。
このままでは、ただの訓練では終わらない。
全員が理性のタガを外され、獣のように絡み合う未来が見えていた。
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紅牙は、自身の雄が猛っていることがバレないかと戦闘への集中が削がれながらも、玄翠と互角にやりあっていた。一方蒼斗は先輩としての矜持が彼を奮い立たせ、橙馬を力でねじ伏せていた
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紅牙の巨躯が、まるで猛る雄牛のように前進した。
全身を締め付けるインナースーツが、筋肉の収縮に合わせて微弱電流を流し続け、彼の神経を極限まで昂らせている。
スーツの縫い目が皮膚を擦る感触さえもが、ヤスリで撫でられるような鋭利な刺激となって脳髄を突き刺す。
だが、紅牙は何よりも今、自身の股間にぶら下がる「弱点」を気にかけていた。
「ぐぅぉぉぉッ!! 玄翠さぁんッ!!」
咆哮と共に繰り出された右ストレート。
それは風切り音を置き去りにするほどの速度だったが、玄翠はまるで柳のように体をたわませ、紙一重でかわした。
「……荒いな。力みすぎだ、紅牙」
玄翠の声は冷徹だ。
かわされた勢いを利用して体勢を崩した紅牙の脇腹へ、玄翠の鋭い膝蹴りが突き刺さる。
ドスッ!!
「がはッ……!!」
内臓を揺らす衝撃。
だが、それ以上に紅牙を苦しめたのは、衝撃が走った瞬間に全身を駆け巡った電流のような快感だった。
インナーが増幅した痛覚は、脳内でねじ曲がり、強烈な性的興奮へと変換されてしまう。
膝をつきそうになるのを堪え、紅牙は歯を食いしばった。
「(くそッ……! こんな無様な姿、玄翠さんに見られるわけには……!)」
紅牙の視界の端で、自身の股間が浅ましく脈打っているのが見えた。
赤いヒーロースーツの股間部分は、テントを張るように大きく隆起し、インナーとの摩擦で限界まで張り詰めている。
もしこの状態で組み伏せられでもしたら、この卑猥な勃起が玄翠の身体に押し付けられることになる。
それだけは避けなければならない。男としての、そしてヒーローとしての尊厳に関わる。
「どうした? 腰が引けているぞ。いつものお前らしくない」
玄翠が静かに間合いを詰める。
その眼光は、紅牙の動揺を見透かしているようでいて、あえて核心には触れない大人の余裕を漂わせていた。
「うるせぇ……! 俺はいつだって本気だ! 調子に乗るんじゃねぇぞ、オッサン!」
紅牙は羞恥心を怒りへと無理やり変換し、再び拳を振るった。
防御を捨てた捨て身のラッシュ。
ボッ、ガッ、ドォン!!
玄翠のガードの上から、重い打撃音を響かせる。
互いの距離がゼロになり、筋肉と筋肉がぶつかり合う。
「ハァッ、ハァッ……! どうだッ、これでもまだ余裕かよ!?」
密着した瞬間、紅牙の硬化した逸物が玄翠の大腿部に触れたかもしれない。
だが、紅牙はそれに気づかないふりをして、さらに力を込めて玄翠を押し込んだ。
戦いに集中することでしか、この異常な興奮を誤魔化す術はなかったのだ。
一方、隣のスペースでは、予想外の展開が繰り広げられていた。
序盤こそ橙馬のスピードに翻弄されていた蒼斗だったが、今は完全に形勢を逆転させていた。
「調子に乗るなよ、クソガキがぁッ!!」
蒼斗の拳に、青白い稲妻が爆ぜる。
インナーによる過敏な感覚は、蒼斗にとっても苦痛であり、快楽の源泉だった。
だが、昨夜の橙馬との一件――あの部屋で押し倒されそうになった屈辱と、それに感じてしまった自分への嫌悪感が、蒼斗の闘争本能に火をつけていた。
「なッ……!? 速えぇ……!?」
橙馬が反応するよりも早く、蒼斗が懐に潜り込む。
ドゴォォォン!!
強烈なボディブローが橙馬のみぞおちに深々とめり込んだ。
「ぐ、おぇッ……!?」
橙馬の目が飛び出しそうになる。
息が詰まり、膝から崩れ落ちそうになる橙馬の襟首を、蒼斗は乱暴に掴み上げた。
「痛ぇか? 効くか? インナーのおかげで、いつもの倍は感じるだろ?」
蒼斗の瞳は据わっていた。
彼自身の股間もまた、インナーの刺激でパンパンに張り詰め、先端からカウパーを滲ませている。
だが、今の彼はそれを恥じるよりも、目の前の生意気な後輩を「教育」することに意識を集中させていた。
「お前が望んだんだろ? 俺の熱を受け止めたいってよぉ! だったら、最後まで付き合えよ!」
蒼斗は橙馬の足を払い、床に叩きつけた。
ダンッ!!
受身を取る間もなく背中を強打した橙馬の上に、蒼斗が馬乗りになる。
マウントポジション。
それは格闘技における優位な体勢であり、同時に極めて性的な支配の構図でもあった。
「がはッ……! せ、先輩……アンタ、マジで……!」
「黙ってろ。俺はまだ満足してねぇんだよ」
蒼斗は橙馬の両腕を膝で押さえつけ、逃げ場を塞いだ。
二人の股間が、薄いインナーとスーツ越しに密着する。
グリグリと押し付けられる互いの剛直。
橙馬の硬いモノが、蒼斗の尻の下で脈打っているのが分かる。
蒼斗のモノもまた、橙馬の下腹部を熱く圧迫していた。
「くっ……! 重いって……! それに、なんか当たってんだけど……」
「うるせぇ! これは武器だ! 戦う男の闘争心の塊だ! 変な勘違いしてんじゃねぇぞ!」
蒼斗は顔を真っ赤にしながら怒鳴った。
自分でも支離滅裂なことを言っている自覚はある。
だが、こうして橙馬をねじ伏せ、完全に支配下に置くことでしか、昨夜の借りを返すことはできないと本能が叫んでいたのだ。
「ははッ……! 言うねぇ……! でも、アンタのそこ、ビクビクしてんぜ……?」
橙馬は苦痛に顔を歪めながらも、不敵な笑みを浮かべて挑発をやめない。
その挑発に乗せられるように、蒼斗は無意識に腰を打ち付けた。
ドンッ!
恥骨と恥骨がぶつかる鈍い音。
そして、互いの敏感な部分が擦れ合う感触。
「んッ……! くぅ……ッ!」
「あぐッ……! っ……!」
二人の口から、同時に苦悶の声が漏れた。
インナーの効果は絶大だった。
ただの打撃のはずが、まるで性交のような強烈な快楽となって神経を焼き尽くす。
蒼斗は橙馬を殴ろうと拳を振り上げたが、その手は空中で震え、止まった。
殴れば、その反動で自身の身体にも快感が走る。
それが分かっているからこそ、最後の一撃を躊躇ってしまう。
「そこまで。試験終了です」
スピーカーから、博士の冷静な声が響き渡った。
その瞬間、張り詰めていた糸が切れたように、全員の動きが止まった。
蒼斗は荒い息を吐きながら、橙馬の上から退いた。
解放された橙馬もまた、床に大の字になって天井を見上げている。
紅牙と玄翠も距離を取り、互いに乱れた呼吸を整えていた。
四人の男たちは、汗でぐっしょりと濡れたスーツに身を包み、肩で息をしている。
その誰もが、股間部分の不自然な膨らみを隠そうともせず――いや、隠す余裕すらないほどに消耗していた。
「お疲れ様でした。非常に興味深いデータが取れましたよ。特に、肉体的接触時の心拍数と脳内麻薬の分泌量が、通常の戦闘時と比較して300%も上昇しています」
博士がタブレットを見ながら歩み寄ってくる。
その視線は、彼らの赤らんだ顔と、未だに鎮まらない下半身へと向けられたが、特に指摘することはない。
あくまで「生体反応の一部」として処理されている。
「はぁ、はぁ……。ったく、とんでもねぇスーツだぜ……。身体中が火事になったみてぇだ」
紅牙は膝に手をつき、脂汗を拭った。
玄翠との戦闘で極限まで高められた緊張感が解け、今になって強烈な疲労感と、処理しきれない性的興奮が波のように押し寄せてくる。
「……だが、感覚の鋭敏化という点では効果的だった。敵の殺気を肌で感じ取ることができたからな」
玄翠は冷静を装っているが、その額にも玉のような汗が浮かんでおり、深緑のスーツの股間もわずかに質量を増しているように見えた。
「へへ……負けたよ、先輩。まさかあんなに激しく乗っかられるとは思わなかったぜ」
橙馬が身を起こし、蒼斗に向かってニヤリと笑った。
その言葉には二重の意味が含まれているようで、蒼斗はバツが悪そうに顔を背けた。
「うるせぇ。……次はもっと完膚なきまでに叩きのめしてやる」
蒼斗の声は震えていた。
インナーを脱げば、この地獄のような過敏さから解放されるはずだ。
だが、身体の芯に残った熱は、そう簡単には消えそうになかった。
「さて、インナーの回収とデータの精査を行いたいところですが……君たちの数値を見る限り、急激なクールダウンは身体に負担をかける恐れがあります」
博士は眼鏡の奥の瞳を光らせ、四人を見回した。
彼らの身体は、まだ戦闘モード――そして発情モードから抜け出せていない。
このまま放置すれば、暴走したエネルギーが何らかの形で爆発するかもしれない。
「少し時間をあげます。このまま軽い調整運動を行うか、あるいは……お互いにマッサージでもして、凝り固まった筋肉と神経をほぐすといいでしょう」
「マッサージ」。
その提案に、四人の空気が一瞬で変わった。
インナーを着たまま、敏感になった身体で触れ合うことの意味を、彼らは理解してしまったからだ。
それは治療という名の、さらなる快楽への誘い。
拒否すべきか、それとも飛び込むべきか。
彼らの理性のダムは、すでに決壊寸前だった。
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橙馬は真っ先に玄翠のもとへいき「玄翠さんマッサージするッス!」とあどけない子供のようにはしゃいでいる。その様子に毒気を抜かれた蒼斗は先ほど自分が橙馬にした変態的な行為を恥じ、紅牙のほうに目を向けると、紅牙も橙馬を呆れたように笑いながら蒼斗のほうへ顔を向ける
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「では、私はモニター室で数値を監視しています。あまり羽目を外しすぎないように」
博士は意味深な言葉を残し、白衣を翻してトレーニングルームを出て行った。
自動ドアが閉まる音が響くと、張り詰めていた空気がふっと緩む。
四人の男たちは、依然として黒いインナースーツによる過剰な締め付けと、神経を逆撫でするような感触に苛まれていたが、それでも戦闘モードからは解放されていた。
「玄翠さん、マッサージするッス!」
沈黙を破ったのは、一番若い橙馬だった。
先ほどまで蒼斗の下で喘ぎ、獣のような目で挑発していた男とは思えないほど、あどけない子供のような声ではしゃいでいる。
橙馬は玄翠の太い腕にまとわりつくように近づいた。
「ほら、さっきの俺の蹴り、結構効いたでしょ? アフターケアさせてくださいよ。俺、こう見えてマッサージには自信あるんスから」
「……お前な。さっきまで殺し合いのような顔をしていたくせに、切り替えが早すぎるぞ」
玄翠は呆れたように息を吐いたが、その表情は満更でもなさそうだ。
年長者として、生意気だが懐いてくる後輩を邪険にはできないのだろう。
「まあいい。確かに背中が張っている。少し頼むか」
「了解ッス! じゃあそこ座ってくださいよ」
二人は部屋の隅にあるマットへ移動し、橙馬が甲斐甲斐しく玄翠の肩を揉み始めた。
その様子は、まるで部活の先輩と後輩のようであり、先ほどの異常な興奮状態が嘘のようだった。
取り残された形になった蒼斗は、その光景を呆然と見つめていた。
そして、じわりと沸き上がるような羞恥心に襲われた。
「(俺……あいつにあんなこと……)」
脳裏に蘇るのは、橙馬の上に跨り、腰を打ち付け、股間を擦り合わせていた自分の姿だ。
「教育」だの「武器」だのと叫びながら、実際はただ自分の欲望を後輩にぶつけていただけではないか。
しかも、相手はあんなにあっけらかんとしている。
これではまるで、自分だけが変態的に興奮していたようで、顔から火が出るほど恥ずかしい。
いたたまれなくなった蒼斗は、助けを求めるように紅牙の方を向いた。
「……まあ、気にすんな蒼斗。あのインナーのせいだ。俺だって、玄翠さんに組み敷かれた時はどうにかなりそうだったぜ」
紅牙はバツが悪そうに髭を撫でながら、苦笑いを浮かべていた。
その視線には「お前の気持ちは痛いほど分かる」という共感の色が浮かんでいる。
「兄貴……。だよな、全部スーツのせいだよな! 俺が変態なわけじゃねぇよな!」
「おうよ。……だがまあ、身体が火照ってんのは事実だ。博士の言う通り、少しほぐしとくか。このままじゃ変な筋肉痛になりそうだ」
紅牙がマットを指差す。
蒼斗は頷き、紅牙と共に床に胡座をかいて向かい合った。
ペアを組むのは自然な流れだったが、問題はこの「敏感すぎる」身体だ。
触れること、触れられることへの恐怖と期待が入り混じる。
「んじゃ、まずは俺がやってやるよ。足、出してみろ」
「お、おう……頼むぜ兄貴」
蒼斗はおずおずと片足を伸ばした。
紅牙のごつごつとした手が、蒼斗のふくらはぎに伸びる。
インナーの黒い生地越しに、温かい掌が触れた瞬間。
「ひゃうッ!?」
蒼斗の口から、素っ頓狂な声が飛び出した。
ビクンッ! と足が跳ね、紅牙の手を蹴り飛ばしそうになる。
「お、おい! 大丈夫か!? まだ触っただけだぞ」
「わ、わりぃ! なんか、電気が走ったみたいに……! くそっ、マジで感度おかしくなってやがる!」
蒼斗は顔を真っ赤にして弁解した。
紅牙の手の熱が、インナーの電子回路を通じて神経を直接撫で回したかのような錯覚。
たかがふくらはぎでこれだ。もっと上、太腿や腰を触られたらどうなるのか想像するだけで、股間の楔がビクリと反応してしまう。
「力を抜け。ガチガチじゃねぇか。……優しくやるからよ」
紅牙は諭すように言い、再び手を添えた。
今度はゆっくりと、圧をかけすぎないように慎重に揉みほぐしていく。
親指が腓腹筋の溝をなぞり、掌全体で包み込むようにマッサージする。
「う、くぅ……っ! んんッ……!」
蒼斗は唇を噛み締め、漏れ出しそうになる声を必死に押し殺した。
気持ちいい。だが、その快感の質が明らかにおかしい。
筋肉のコリが解ける安らぎと同時に、背筋を駆け上がるようなゾクゾクとした性的興奮が襲ってくる。
紅牙の手が動くたびに、インナーが皮膚を擦り、その摩擦熱が下腹部へと溜まっていく。
「どうだ? 少しは楽になったか?」
「あ、ああ……すげぇ、効く……。けど、なんか……変な汗が出てくる……」
蒼斗の額には玉のような汗が浮かび、目は潤んでいる。
紅牙はその艶っぽい表情を見て、自身の喉がゴクリと鳴るのを自覚した。
目の前で無防備に足を投げ出し、自分の手技に耐えながら喘ぐ弟分。
その股間は、スーツを内側から突き上げるように膨らみ、先端からはシミができているのが見て取れる。
「(チッ……こいつを見ているだけで、俺の方まで疼いてきやがる……)」
紅牙自身の股間もまた、インナーの締め付けに抗うように硬度を増していた。
人の世話をしている場合ではない。自分こそ誰かに触れてもらい、この熱を散らしてもらいたい。
そんなマゾヒスティックな欲求が首をもたげる。
「……よし、交代だ。俺の背中も頼むぜ」
紅牙は逃げるように蒼斗の足を離すと、背中を向けてあぐらをかいた。
その背中は広く、厚く、そして微かに震えていた。
「わ、分かった。……手加減できねぇかもしれねぇけど」
蒼斗は震える手を伸ばし、紅牙の僧帽筋に触れた。
岩のように硬い筋肉。
だが、指先がめり込んだ瞬間、紅牙の巨体がピクリと揺れた。
「ぐぅッ……! そこッ……!」
紅牙が低い唸り声を上げる。
苦痛ではない。我慢している男の声だ。
蒼斗はその反応に、サディスティックな喜び――いや、仲間を「攻略」するような背徳的な興奮を覚えた。
あの強靭な兄貴が、自分の指一本でこんなに弱々しい反応を見せるなんて。
「兄貴、ここ凝ってるぜ? ほら、ここも……」
蒼斗は両手で肩を掴み、親指でツボをグリグリと押し込んだ。
インナー越しに伝わる紅牙の体温。
そして、マッサージに合わせて漏れる紅牙の吐息。
「はぁ、っ……! 蒼斗、もう少し……下だ……。肩甲骨の間を……」
「ここか? ……うわ、すげぇ張ってる」
蒼斗の手が背中を滑り降りる。
その動きに合わせて、紅牙の上半身が前のめりになり、結果として彼の股間が床に押し付けられる形になった。
硬く勃起したイチモツが、床との摩擦で刺激される。
「あぐッ……! くぅゥ……ッ!」
紅牙は堪えきれずに腰をくねらせた。
背中からの指圧と、股間への圧迫刺激。
挟み撃ちにされた快感が、彼の理性を削り取っていく。
「……随分と熱心だな、お前たち」
ふと、背後から玄翠の声がかかった。
見れば、玄翠と橙馬のペアもマッサージを終えたのか、こちらを見ている。
橙馬の目は好奇心に輝いており、玄翠はどこか愉しげな表情だ。
「紅牙先輩、すごい声出てたッスよ? そんなに気持ちいいんスか?」
図星を突かれ、紅牙の顔が赤黒く染まる。
「う、うるせぇ! これは治療だ! 変な勘違いすんじゃねぇ!」
「治療にしては、心拍数の上昇が著しいですね。これでは逆効果になりかねません」
いつの間にか戻ってきていたのか、あるいはスピーカー越しか。
博士の冷静なツッコミが入る。
四人はバツが悪そうに視線を泳がせた。
インナースーツを着用している限り、単なるマッサージでさえ濃厚なペッティングへと変貌してしまう。
このままでは、全員が暴発するのは時間の問題だった。
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「仕方がないの」玄翠はそういうと座っている紅牙の後ろに自分も座り、左手で紅牙の乳首を、右手で彼の雄をいじり始める。「玄翠さん何して・・・!」紅牙は驚きの声とともに抗議するが、玄翠は「いいか、ワシらはこの昂りも飼いならしていかねばならん。これは必要なマッサージだ、何も心配せんでええ」そう言い手を止めない。年長者が言うならと紅牙も抗議の声を引っ込める
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トレーニングルームの空気が、奇妙にねじれ始めていた。
四人の男たちが放つ熱気と、インナースーツがもたらす過敏な神経の反応が、空間を濃密なフェロモンで満たしている。
そんな中、最年長である玄翠が動いた。
彼はあぐらをかいて座る紅牙の背後に回り込むと、まるで座禅を組むような落ち着き払った動作で腰を下ろした。
紅牙の広い背中に、玄翠の厚い胸板がぴたりと重なる。
二人の巨躯が重なり合う様は、それだけで異様な迫力を醸し出していた。
「仕方がないの。……紅牙、力を抜け。今から気の流れを整えてやる」
「あ、ああ……頼むぜ、玄翠さん。背中が張っててよ……」
紅牙は疑うこともなく、強張った肩の力を抜いて身を委ねた。
だが、次の瞬間、玄翠の手が予想外の場所へと伸びた。
左手が脇の下をくぐり抜け、紅牙の分厚い大胸筋へ。そして右手が、あぐらの間に無防備に晒された股間へと這う。
「っ……!? げ、玄翠さん……何して……ッ!」
紅牙の声が上擦る。
玄翠の左手の親指が、インナースーツ越しに紅牙の乳首を的確に捉え、グリリと擦り上げたからだ。
同時に、右手の平が紅牙の膨れ上がった股間を鷲掴みにする。
「騒ぐな。……いいか、ワシらはこの昂りも飼いならしていかねばならん。これは必要なマッサージだ、何も心配せんでええ」
玄翠の声は、耳元で囁かれる呪文のように低く、説得力に満ちていた。
長年の経験に裏打ちされた落ち着きが、異常な行為を「正当な処置」であるかのように錯覚させる。
紅牙は口を開きかけたが、反論の言葉が見つからなかった。
信頼する先輩であり、戦略家である玄翠が言うのだから、何か深い意味があるのかもしれない――そんな思考が、インナーによる快楽の波に飲まれていく。
「だ、だけどよ……そこは……っ! うぅッ……!」
紅牙は抗議の声を飲み込み、代わりに甘い喘ぎを漏らした。
玄翠の指先が、硬く尖った乳首を執拗に弄る。
インナースーツの極薄の生地が、指紋の凹凸さえも鮮明に伝え、過敏になった神経に電流を流し込む。
たかが乳首への刺激だが、今の紅牙にとっては全身を貫くような衝撃だった。
「ほう……ここが滞っているな。随分と硬くなっている」
玄翠は冷静に分析しながら、右手をゆっくりと動かし始めた。
紅牙の雄――赤いスーツと黒いインナーに包まれ、岩のように硬化したイチモツを、掌全体で包み込み、上下に扱く。
スーツの摩擦音が、静まり返ったジムに卑猥に響く。
ジュッ、ジュッ、という衣擦れの音が、紅牙の羞恥心を煽り立てた。
「あぐッ……! 玄翠さぁん……! そ、そんなに擦ったら……ッ!」
「黙っていろ。お前のここの血流が、全身の気の巡りを阻害しているのだ。……ほぐしてやらねば、次の戦いに支障が出るぞ」
玄翠の手つきは巧みだった。
ただ闇雲に刺激するのではなく、根元を締め付け、先端を弾き、カリの裏側を親指で重点的に攻める。
紅牙の腰が勝手に跳ねる。
後ろから抱きすくめられているため逃げ場はなく、むしろ玄翠の股間に自身の臀部を押し付けるような格好になってしまう。
その異様な光景を、蒼斗と橙馬は固唾を呑んで見守っていた。
目の前で繰り広げられる、大の男同士の濃厚な接触。
しかも、されるがままになっているのは、普段あれほど男らしく振る舞っている紅牙だ。
その紅牙が、顔を真っ赤にして涎を垂らし、年上の男の腕の中で雌のように震えている。
「すげぇ……。玄翠さん、マジでマッサージしてるつもりなのか? それとも……」
「ば、馬鹿野郎……見ちゃダメだ……! あれは……高度な精神統一の一種だ、きっと……!」
蒼斗は必死に自分に言い聞かせようとしたが、視線を逸らすことができなかった。
紅牙の股間が、玄翠の手の中でさらに大きく脈打ち、スーツ越しにその形状を露わにしていく様が、目に焼き付いて離れないのだ。
そして何より、紅牙の口から漏れる声が、蒼斗の耳を犯していく。
「ひぁッ、んぅッ……! すごい……手が、熱い……! インナーが擦れて……頭がおかしくなりそうだ……ッ!」
紅牙は玄翠の太い腕にしがみついた。
拒絶するためではない。快感のあまり崩れ落ちそうになる身体を支えるためだ。
玄翠の左手が、乳首をつまみ上げるように引っ張る。
同時に、右手は激しさを増し、鈴口周辺を親指の腹でグリグリと押し回した。
「どうだ紅牙。熱が一点に集中していくのが分かるか? それを解放してやるのが、ワシの役目だ」
「わ、わかる……! 集まってる……先っぽに、全部……ッ! 玄翠さん、もう……我慢できねぇ……!」
紅牙の腹筋が痙攣し、太い太腿が小刻みに震える。
インナースーツの電子回路が、彼の絶頂へのカウントダウンを加速させていた。
玄翠は耳元で低く笑うと、さらに残酷な一言を囁いた。
「まだだ。まだ出すな。……お前のその立派なモノ、もっとワシの手の中で育ててみせろ」
玄翠はあえて刺激を弱め、焦らすようにゆっくりと亀頭の輪郭をなぞった。
寸止めの地獄。
紅牙は喉を詰まらせ、涙目で天井を仰いだ。
その表情は、苦痛と快楽が入り混じった、男が見せてはいけないほどに淫らなものだった。
「……なぁ先輩。見てるだけでムラムラしてこねぇ?」
橙馬が、隣の蒼斗に小声で囁きかけた。
その声には、隠しきれない興奮が滲んでいる。
橙馬の視線は紅牙たちに釘付けだが、その手は無意識のうちに自身の股間へと伸びていた。
「ッ……! お前……!」
蒼斗もまた、限界だった。
インナースーツを着ているのは彼らも同じだ。
紅牙の喘ぎ声と、肉体が擦れ合う音が、過敏になった聴覚を通して脳髄を刺激する。
共感性羞恥と、それを上回る共感性興奮。
自分もあんな風にされたい、あるいはしてやりたいという倒錯した衝動が、理性の堤防を決壊させようとしていた。
「俺たちも『治療』、必要だよな? さっきのマッサージじゃ全然足りてねぇし」
橙馬はニヤリと笑うと、蒼斗の手を取った。
そして、強引に自身の膨張した股間へと導いた。
「うわッ!? な、何させて……!」
蒼斗の手のひらが、橙馬の硬いモノに触れる。
スーツ越しでも分かる、血管が浮き出るほどの怒張。
熱い。火傷しそうなほどの熱量だ。
蒼斗は手を引っ込めようとしたが、インナーのせいで指先の感覚が鋭敏になりすぎており、触れた瞬間の感触が強烈な快楽となって自身に跳ね返ってきた。
「(なんだこれ……!? 人のチンポ触ってるだけなのに……俺の身体まで痺れてきやがる……!)」
蒼斗の呼吸が荒くなる。
橙馬はそれを見透かしたように、蒼斗の手を自分の股間に押し付けたまま、腰を前後に揺すり始めた。
「ほら、先輩の手、気持ちいいぜ? インナーのおかげで、指の動きがすげぇエロく感じる」
「くっ……! 馬鹿野郎……こんな、みんな見てる前で……!」
言葉とは裏腹に、蒼斗の指は橙馬のモノの形を確かめるように動いてしまっていた。
隣では紅牙が玄翠に弄ばれ、こちらでは自分が後輩のモノを触らされている。
この異常な空間、異常な状況。
それが蒼斗の中に眠っていた「露出癖」に近い興奮のスイッチを押した。
「……興味深い。集団心理と感覚増幅が作用し、互いの行動が連鎖的に興奮を高めていますね」
スピーカーから博士の声が響くが、もはや誰も気にしていない。
むしろ、誰かに見られているという事実が、彼らの背徳感を煽るスパイスにしかなっていなかった。
「あ、あぁ……ッ! 玄翠さん、そこっ、鈴口……いじりすぎ……ッ!」
紅牙の限界が近づいていた。
玄翠の親指が、尿道口をこじ開けるように圧迫し、同時に掌で竿全体を激しくしごき上げる。
紅牙の上半身が弓なりに反り、口から無様な涎が糸を引く。
「良い声だ。だが、まだ足りん。お前の奥底に眠るエネルギーを、全て絞り出してやる」
玄翠はさらに密着し、自身の股間を紅牙の臀部の割れ目に押し当てた。
ゴリッという感触。
玄翠のモノもまた、限界まで硬く反り返っていることが伝わる。
「ひっ……!? 玄翠さんのも……当たって……! でかい……!」
背後からの硬質な圧迫感。
それが紅牙にとって決定的なトリガーとなった。
尊敬する男に、後ろから犯されるような体勢で、前を弄られている。
男としての尊厳が崩れ去り、ただ快楽を貪る雌の獣へと堕ちていく感覚。
「もうダメだッ! 出るッ、出ちまうッ!! 許してくれぇぇッ!!」
「出せ。全てワシの手に吐き出せ」
玄翠が速度を上げた。
シュッシュッシュッという高速のストローク音。
紅牙は白目を剥き、全身を硬直させた。
「イぐッ!! うおおおおおッッ!!!」
紅牙の絶叫と共に、彼の股間が爆発した。
インナースーツとヒーロースーツの二重の拘束をものともせず、大量の精液が噴出する。
ドクン、ドクンと脈打ちながら、行き場のない白濁液がスーツの中へ広がり、温かく、そして粘着質に下腹部を汚していく。
「あぐぅッ……はぁ、はぁ、はぁ……ッ!!」
絶頂の余韻で身体がビクビクと痙攣する。
玄翠はその震えを手で感じ取りながら、ゆっくりと動きを止めた。
しかし、手を離すことはない。
射精直後の敏感な先端を、あえて優しく撫でることで、紅牙に残酷な追撃を与える。
「んあぁッ……! や、やめて……そこはもう……!」
「……ふむ。随分と溜まっていたようだな。スーツがびしょ濡れだ」
玄翠は平然と言い放った。
その言葉に、紅牙は羞恥で顔を覆うしかなかった。
自分の出したものでスーツの中がぐちょぐちょになっている感触。
それがインナーの過敏さによって、不快であると同時に、どうしようもなくエロティックな刺激となって続くのだ。
「うわぁ……先輩、聞きました? 紅牙さん、スーツの中でイッちゃいましたよ」
橙馬が興奮気味に囁く。
蒼斗は何も言えず、ただ紅牙の哀れで淫らな姿を見つめていた。
だが、その手は止まっていなかった。
橙馬のモノを握る手に力が入り、いつの間にか自分自身の股間にも手を伸ばしたくて震えている。
「俺たちもさ……このままじゃ終われないですよね? ほら、博士も止めてこないし」
「っ……! お前……何を……」
橙馬は蒼斗の耳元に顔を寄せ、悪魔のような提案をした。
「俺のインナーの中に、手、入れてくれませんか? 直に触ってほしいんスよ。先輩のその、エッチな手つきで」
「直に」。
その言葉の響きが、蒼斗の脳内で弾けた。
インナースーツの下。素肌。そして生の男根。
この過敏な状態でそんなことをすれば、どうなるか。
恐怖と、それ以上の好奇心が蒼斗を支配する。
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「これ、橙馬よ、相手の意志も確認せずに無理矢理はいかん。収まりがつかないならお前もこっちに来い」と玄翠が呼びかける。その言葉に先ほどまで生意気な口を蒼斗に聞いていた橙馬が急に言葉に詰まる。その様子に蒼斗はなんとなく察した。「ははぁ、お前・・・」蒼斗が橙馬をからかうような口調で何かを言いかけるのを「先輩うっさいっす!」と橙馬が慌ててとめ「げ、玄翠さんお願いして・・・いっすか」と懇願する
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「これ、橙馬よ。相手の意志も確認せずに無理矢理はいかん。若いのは結構だが、節度というものがあるだろう」
玄翠の声が、ねっとりとした空気を切り裂くように響いた。
紅牙の処理を終え、その手にはまだ白濁した粘液の感触が残っているであろうベテランヒーローは、鋭くも穏やかな眼差しで若者たちを見据えていた。
「収まりがつかないのなら、お前もこっちに来い。蒼斗を困らせるな」
その言葉を聞いた瞬間、橙馬の動きがピタリと止まった。
先ほどまで蒼斗の耳元で囁き、強引に手を引こうとしていた肉食獣のような覇気は霧散し、代わりに鳩が豆鉄砲を食らったような間の抜けた表情が浮かぶ。
「あ……えっと、玄翠さん……それは……」
橙馬の視線が泳ぐ。
その顔には、生意気な新人の仮面の下に隠された、年長者に対する畏敬の念――あるいは、もっと原始的な「憧れ」に近い色が浮かんでいた。
蒼斗はその変化を見逃さなかった。
普段、自分に対しては挑発的で強気な橙馬が、玄翠の前では借りてきた猫のように大人しくなる。
そのギャップに、蒼斗の中でピンとくるものがあった。
「ははぁ、お前……。なるほどな」
蒼斗はニヤリと意地悪く笑い、橙馬の肩を肘で小突いた。
「俺には散々偉そうな口を利いといて、玄翠さんのテクニックには興味津々ってわけか? 実はさっきの紅牙の兄貴を見て、羨ましかったんだろ?」
「ッ!? せ、先輩! うっさいっすよ!!」
図星を突かれたのか、橙馬は顔を耳まで赤く染めて慌てて蒼斗の口を塞ごうとした。
だが、その慌てふためく様子こそが何よりの肯定だった。
インナースーツの過敏な刺激と、目の前で見せつけられた玄翠の熟練の手技。
それが、橙馬の中に眠る「導かれたい」という潜在的な欲求を刺激していたのだ。
「ち、違いますって! ただ、玄翠さんのマッサージは効果が高そうだと……!」
「へえ、効果ねぇ。……ほら、呼ばれてるぜ? 行ってこいよ」
蒼斗は背中を押し、橙馬を玄翠の方へと促した。
橙馬は一瞬躊躇したが、意を決したように玄翠に向き直った。
その股間は、先ほどまでの蒼斗への挑発時よりもさらに大きく、痛々しいほどに膨張していた。
「げ、玄翠さん……お願いして……いっすか。俺もその……パンパンで、どうしようもなくて」
橙馬は上目遣いに玄翠を見上げ、懇願した。
その声は震えており、どこか甘えるような響きを帯びている。
玄翠は深く頷くと、自身のあぐらの間のスペース――先ほどまで紅牙が座っていた場所――をポンと叩いた。
そこにはまだ紅牙の残り香と、微かな湿り気が残っているはずだが、それが逆に橙馬の興奮を煽ったようだ。
「構わんよ。お前のような元気な若者の面倒を見るのも、年寄りの役目だ。……さあ、ここへ座れ」
「は、はい……失礼します……」
橙馬はおずおずと玄翠の前に背を向けて座った。
二人の身体が密着する。
玄翠の太い腕が、背後から橙馬の引き締まった腹部に回されると、橙馬はビクリと身体を震わせた。
「うぁ……っ! 玄翠さんの身体……でかい……熱いっす……!」
インナースーツ越しに伝わる玄翠の体温と鼓動。
そして何より、背中に感じる玄翠の落ち着き払ったオーラが、橙馬の暴走寸前の神経をさらに昂らせた。
「力を抜けと言ったはずだ。……ふむ、紅牙以上に張っているな」
玄翠の手が、迷いなく橙馬の股間へと伸びた。
橙色のスーツと黒いインナーの中で暴れる若い雄の象徴を、大きな掌が包み込む。
「ひっ……! あ、あぁっ……!!」
触れられた瞬間、橙馬の喉から甲高い喘ぎが漏れた。
玄翠は慌てず、ゆっくりと、しかし力強く竿を扱き始めた。
若い橙馬のモノは敏感で、玄翠の指が擦れるたびにビクンビクンと跳ね回る。
「いい反応だ。インナーの刺激が強すぎるようだな。ワシの手で馴染ませてやろう」
玄翠の親指が、亀頭の輪郭を丹念になぞる。
グリグリとカリ首を刺激されるたび、橙馬は玄翠の胸板に頭を預け、快楽に身をよじった。
「玄翠さん……すごい……! 指、気持ちいい……ッ! 蒼斗先輩の時と全然違う……ッ!」
「口が減らん奴だ。集中しろ。……お前の熱、全てワシが受け止めてやる」
その様子を、紅牙と蒼斗は並んで見つめていた。
紅牙はすでに賢者タイムの安らぎを得ていたが、蒼斗の股間は依然としてカチカチに勃起したままだ。
「へっ、あのクソガキ……随分と可愛らしい声出しやがって。玄翠さんの手にかかりゃイチコロだな」
「……ああ。なんか、見てるこっちが恥ずかしくなってくるぜ」
蒼斗はそう言いながらも、自身の股間をそっと手で押さえた。
目の前で繰り広げられる「治療」と称した手淫ショー。
そして、自分だけが取り残され、未処理のまま放置されているという焦燥感。
「(くそ……俺はどうすりゃいいんだよ。このまま一人で抜けってか?)」
博士のモニター越しに見つめられながら、仲間たちが次々と快楽に堕ちていく。
その背徳的な空気の中で、蒼斗の理性もまた、限界を迎えようとしていた。
[speaker name="選択"]
「ここまできたら今更か、おい蒼斗、お前は俺が処置してやるよ」紅牙が蒼斗に言う。「えっ紅牙さんが?」紅牙が自分の雄を握る?そう考えただけで蒼斗の雄は絶頂しそうになる。
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「ここまできたら今更か。おい蒼斗、お前は俺が処置してやるよ」
紅牙はあぐらをかいたまま、重々しく告げた。
その声には、先ほど玄翠の手によって強制的に絶頂させられた恥じらいよりも、弟分を見捨ててはおけないという奇妙な責任感が滲んでいた。
彼は自分の股間が白濁液で汚れていることなど意に介さず、太い腕を伸ばして蒼斗の身体を引き寄せた。
「えっ……紅牙さんが……?」
蒼斗の声が裏返る。
憧れの兄貴分であり、筋骨隆々たる巨躯を誇る紅牙。
その武骨で大きな手が、自分の張り詰めた雄を握る。
ただそれだけの想像が、インナースーツによって過敏になった蒼斗の脳髄を激しく揺さぶった。
視界が白く明滅するほどの興奮。
「なんだ、嫌なのか? 玄翠さんと橙馬を見てみろ。あっちだけズルいなんて思ってんだろ」
紅牙はニヤリと笑うと、蒼斗を自分のあぐらの間に座らせた。
背後から包み込まれるような体勢。
紅牙の分厚い胸板が、蒼斗の背中にピタリと密着する。
ドクン、ドクンという力強い心音が、インナーの薄い生地を通して蒼斗の背骨に直接響いてくるようだった。
「い、嫌じゃねぇっすけど……! 兄貴、さっきイッたばっかじゃ……」
「馬鹿野郎、俺の回復力を舐めんな。それに、人の世話をするくらい造作もねぇ」
紅牙の腕が、蒼斗の脇腹を通って下腹部へと回される。
視界の端に、赤色のスーツに包まれた丸太のような腕が見えるだけで、蒼斗の呼吸は浅く速くなった。
そして、その手が迷いなく核心へと到達する。
「ひぁっ……!!」
紅牙の掌が、蒼斗の股間を鷲掴みにした。
優しさなどない、男らしい力強さ。
しかし、インナーの電子回路がその圧力を増幅し、まるで無数の電流が陰茎を駆け巡るような快感へと変換してしまう。
「すげぇな……カチカチじゃねぇか。これじゃ痛くて動けねぇわけだ」
紅牙は蒼斗の耳元で低く囁くと、ゆっくりと手首を動かし始めた。
青いスーツと黒いインナーの中で暴れる蒼斗のイチモツを、根本から先端まで、搾り上げるように擦り上げる。
ジュッ、ジュッ。
スーツの繊維が擦れる音が、鼓膜を震わせる。
「あぐッ……! 兄貴の手……ゴツゴツしてて……熱いっ……!」
蒼斗は紅牙の腕にしがみついた。
逃げようとしているのではない。快感の波に耐えきれず、縋り付いているのだ。
紅牙の指には、長年の鍛錬で培われた硬いマメがある。
その硬質な感触が、インナー越しでも鮮明に伝わり、敏感な竿を容赦なく責め立てる。
「へっ、いい反応しやがる。……ここか? ここが気持ちいいのか?」
紅牙は意地悪く、親指の腹で亀頭のカリ首を重点的に擦った。
グリグリと押し付けられる圧力。
「んあぁッ……! そこッ、カリ……やばいッ……!」
蒼斗の上体がのけ反り、後頭部が紅牙の肩にぶつかる。
紅牙はその反応を楽しみながら、さらにピッチを上げた。
先ほど自分が玄翠にされたように、今度は自分が蒼斗を支配している。
その優越感が、紅牙の中に残っていた微かな欲求不満をも解消していくようだった。
一方、隣では玄翠と橙馬のペアも佳境を迎えていた。
「玄翠さぁん……! もう……もう無理っス……! イキたい……ッ!」
橙馬は涙目になりながら、玄翠の胸に顔を埋めていた。
玄翠の熟練の手技は、若く淡白な橙馬の持久力を容易く削り取っていたのだ。
一定のリズムで扱きながら、時折、鈴口を弾くような刺激を混ぜる。
そのたびに、橙馬の腰がビクンと跳ね、インナーの中での圧が高まっていく。
「ふむ、まだ早い。若いのだから、もう少し粘ってみせろ」
玄翠は冷徹に告げると、あえて根元を強く締め付け、射精の衝動をせき止めた。
寸止め。
出口を塞がれたエネルギーが、橙馬の下腹部で渦を巻き、限界を超えた熱となって暴れ回る。
「ひィッ……!? だ、ダメ……! 止めないで……! 壊れちゃう……ッ!」
橙馬が懇願する。
普段の生意気さは見る影もなく、ただ快楽を乞うだけの雌のような姿。
玄翠はその様子を満足げに見下ろすと、締め付けていた指をパッと離し、一気に先端まで擦り上げた。
「よし、解放していいぞ」
「あ゛あぁぁーーッ!!!」
堰を切ったように、橙馬の絶叫が響き渡った。
インナーの中で、熱い飛沫がどっと溢れ出す。
橙色のスーツの股間部分が、内側からの圧力で濡れ色に変わり、体液の温かさが広がっていく。
橙馬はガクガクと身体を震わせ、玄翠の腕の中で脱力した。
その絶叫は、蒼斗にとっても最後の一押しとなった。
隣で橙馬がイッた音、匂い、そして空気感。
それが伝染し、蒼斗の臨界点を突破させる。
「兄貴ッ……! 俺も……もうダメだッ! 出すッ……!」
「おう、遠慮すんな! 全部俺の手に吐き出しちまえ!」
紅牙は蒼斗の宣言に応え、最も激しいストロークを見舞った。
バシュッ、バシュッという高速の摩擦音。
蒼斗の視界が真っ白に染まる。
「イッ、イぐぅッ!! うあぁぁッ!!」
蒼斗の身体が弓なりに反り、紅牙の腕の中で激しく痙攣した。
インナースーツの制約を超え、白濁した精が勢いよく放たれる。
ドクン、ドクンと脈打つたびに、蒼斗の魂までもが吸い出されていくような感覚。
紅牙の手の中で、蒼斗のイチモツは何度も跳ね、最後の一滴まで絞り出された。
「……へっ、凄まじいな。スーツがパンパンだぜ」
紅牙は動きを止め、蒼斗の汗ばんだ髪を撫でた。
蒼斗は荒い呼吸を繰り返しながら、虚ろな目で天井を見つめている。
下半身の不快なほどの湿り気さえも、今は心地よい倦怠感の一部となっていた。
静寂が戻ったトレーニングルームには、四人の男たちの荒い息遣いだけが残されていた。
全員がインナースーツの中で果て、その証拠を股間に刻み込んでいる。
ヒーローとしてあるまじき醜態かもしれない。
だが、極限まで高められた肉体と精神が解放された後の表情は、どこか憑き物が落ちたように晴れやかでもあった。
「はぁ……はぁ……。すげぇ……死ぬかと思った……」
橙馬が玄翠の腕から抜け出し、床に大の字になった。
その顔には深い満足感と、少しの照れくささが浮かんでいる。
「……全くだ。インナーの威力、舐めてたぜ……」
蒼斗もまた、紅牙に支えられながら身体を起こした。
互いに視線を交わし、苦笑いをする。
言葉はなくとも、秘密を共有した共犯者としての絆のようなものが、彼らの間に芽生えていた。
「……見事です。全員の心拍数、脳波、そしてエネルギー放出量。全てのデータが予測値を上回りました」
博士の冷静な声が、現実へと引き戻す。
モニターの向こうで、博士は満足げに頷いていた。
「これにて『限界耐久試験』および『緊急エネルギー排出措置』を終了とします。……なかなか興味深い光景でしたが、これも科学の進歩のため。君たちの協力に感謝します」
「緊急エネルギー排出措置」。
博士はその行為をそう呼んだ。
あくまで実験の一環であり、医療行為であるという建前。
それが四人の男たちのプライドを辛うじて守っていた。
「インナースーツは自動的に洗浄モードへ移行しますが、君たち自身のケアも必要でしょう。今日はこれにて解散とし、十分な休息を取ってください。……明日はまた別のメニューが待っていますからね」
博士の通信が切れる。
四人は重い腰を上げ、互いに肩を叩き合った。
股間の濡れた感触は不快だが、それ以上に身体の奥底から湧き上がる充実感があった。
「よし、風呂だ風呂! 汗も何もかも流して、飯でも食おうぜ!」
「そうだな。……橙馬、蒼斗、よく耐えたな」
「へへっ、玄翠さんのおかげッスよ」
彼らは更衣室へと向かう。
戦いと性、痛みと快楽。
その境界線上で生きる彼らの日常は、これからも続いていくのだ。
廊下を歩きながら、蒼斗はふと紅牙の手を見た。
先ほど自分をイカせてくれた、大きくて温かい手。
その感触を思い出し、再び下腹部が微かに熱くなるのを感じたが、今度はそれを深く心の中にしまい込んだ。